「構造を生成するAI」シリーズ 第2回
企業がAIを導入しても、業務はなかなか賢くならない。
第1回では、その理由を次のように説明しました。
生成AIは創造性を持っている。
しかし、業務には構造が必要である。
つまり重要なのは、
創造性 × 構造性
この二つを両立させることです。(第1回の図ではこれを理想領域と表現しました)
しかし、ここで多くの企業がつまずきます。
なぜなら、
生成AIと構造の関係を正しく理解していないからです。
生成AIによる「生成」と「構造」の関係は2フェーズに分かれる
生成AIが業務で使えるようになるためには、構造に対して2つの異なるフェーズを考える必要があります。
- ①構造生成フェーズ: 創造的に構造を生成するフェーズ
- ②構造利用フェーズ: 生成された構造に従って成果物を生成するフェーズ
図にするとこうなります。

多くの企業は、この2つのフェーズを混同しています。
多くのAI活用がうまくいかない理由
現在のAI活用の多くは、
文脈(コンテキスト)に依存しています。
つまり、「前の会話を覚えているはず」という前提でAIを使っています。
しかし、この方法では構造を扱うことができません。
なぜなら、文脈は
- 不安定
- 消える
- 再利用できない
からです。
その結果、AIは毎回こうなります。
毎回ゼロから考えるAI、それに付き合わされる人間

これでは業務は賢くなりません。
構造は「記憶」されなければならない
業務において構造とは、
- タスク構造
- プロセス構造
- 意思決定構造
- 成果物構造
のようなものです。
これらは文脈以外の場所にAIと切り離して構造として保存される必要があります。
創造性は2回現れる
ここで重要なポイントがあります。
それは、前述の2フェーズに対応して創造性は2回現れるということです。
第1の創造性: 構造を生成する創造性
例:
- 営業プロセスの構造を考える
- プロジェクトのタスク構造を設計する
- 事業モデルの構造を設計する
第2の創造性
構造の中で生成する創造性
例:
- メールを書く
- 提案書を書く
- レポートを書く
つまり、
創造性①: 構造を生成する
創造性②: 構造の中で生成する
この2段階です。
この2つの創造性は、どちらも重要なのです。
構造を介した分離が「仕事が回るAI」を作る
もし、この2フェーズが分離されていれば、
AIは次のように動きます。
構造を生成するAI
↓
構造を記憶
↓
構造に従って仕事を生成
すると、AIは
- 同じ構造を再利用できる
- 組織で共有できる
- 業務プロセスが安定する
つまり、
AIが「業務システム」になるのです。
ここまで来て、初めてAIは企業の仕事を回す存在になります。
次の図は、2フェーズの生成AI活用を提案書の作成に当てはめた例です。フェーズ1の構造生成フェーズでは、提案書の構成、つまり章立てをいろいろと生成AIに作らせて検討し、採用が決定した構成案Bを保存しています。
そして保存した構成案Bを何度も利用して、提案書の各章(1章、2章、3章)を作成します。
このプロセスならば、担当別に執筆した提案書の各章は必ず整合性のとれた提案書となります。つまり、構造が分業を可能にし、組織としての生成AI活用が実現するのです。

次回予告
第3回:SaaS業界のBMCトレンド分析では、今回説明した構造を利用するAIの具体的な事例をご紹介します。
BMCはBusiness Model Canvasの意味で、アレックス・オスターワルダー&イヴ・ピニョールの著書ビジネスモデル・ジェネレーションで紹介されている手法です。
第3回では、その手法の一部を実現する方法をMicrosoft Azure AI FoundryのLLM(大規模言語モデル)を利用して、ツール化し、構造と生成AIの関係を具体的に説明します。
構造と生成の分離によって創造的な結果が生み出せる事例を理解していただけると思います。
「構造を生成するAI」シリーズ
第1回
なぜAIを導入しても業務は賢くならないのか(掲載済み)
第2回
構造を生成するAIとは何か(本記事)
第3回
SaaS業界のBMCトレンド分析
第4回
構造を企業に導入する方法
株式会社シナジー研究所 fusion AI
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