自動車のように
ソフトウェアをつくる

企業情報システム開発の新しいかたち

シナジー研究所は、自動車のようにソフトウェアをつくりたいと考えています。ソフトウェアにはいまや膨大な需要があり、その開発のスピードや品質が、国や社会の豊かさを決める重要な要素の一つになっています。 ところが、ソフトウェアの開発スタイルは、その需要に応えることができず、特に企業情報システムの開発は、長い間、非効率で高コストなプロジェクトとして遂行されてきました。

自動車の生産に目を向けてみましょう。自動車一台は、約1週間で工場を出て完成車となります。いったんユーザーの手に渡った完成車が大きく問題を起こすことはありません。ユーザーは、期待通りの満足感でドライブを楽しむことができます。ソフトウェア開発とのこの違いはどこからくるのでしょう。

ソフトウェアと自動車を比較することが間違っている、という声が聞こえそうですが、この2者の間にはそれほど大きな隔たりはありません。

4つの時間
成熟した産業には4つの時間があります。

成熟した産業には4つの時間があります。

  1. 基本的な生産システム技術を生み出すための時間
  2. 製品を開発するための時間
  3. 注文を受けてから出荷するまでの時間
  4. ある注文から次の注文に応えるまでの時間

自動車には確かにこの4つの時間があります。2は、基本的な機種を開発するための時間で、これは4年程度と言われています。3は、ある注文が工場に投入されてから出荷されるまでの時間で、1週間程度です。さらに、4は、1台1台の車が工場から出てくる間隔で1分程度です。

1はどうでしょう。自動車産業を支える基本的な技術は、エンジンやトランスミッション、最近ならEV車のための、バッテリーやモーターなど様々です。しかし、ビジネスとしての自動車産業の成功を支える決定的な技術は要素技術ではなく生産システム技術です。

たとえば、トヨタには有名はトヨタ生産方式があり、JUST IN TIME(JIT)のコンセプトは良く知られています。その最後の課題と言われたプレス工程のJIT化に、トヨタは実に40年近い年月を費やしています。

さて、ソフトウェア開発の場合は。

2は、製品=ソフトウェアと考えれば、ある程度の規模の情報システムの場合、年単位の時間がかかりますから、その意味で、まずソフトウェアは自動車に近いと言えます。

次に3です。自動車産業において、2と3が明確に異なることは誰にでもわかります。2は、レクサスのような特定の車種を開発する時間で、3は誰かが注文したレクサスが工場に投入されて出荷されるまでの時間です。ところが、ソフトウェア開発では2と3が明確ではない、あるいは同じものになっています。なぜなら、企業情報システムの場合、あるシステムを注文する顧客は1社に限られているからです。

しかし、最近は状況がかわりつつあります。アジャイル開発では、最終的なシステムの要件を初めにすべて特定することをせず、顧客のニーズに応じてイテレーションとかスプリントと呼ばれる短い期間間隔でビジネス機能をリリースしていきます。これを3に該当すると考えれば、ソフトウェア開発における3は1週間前後であると言えるでしょう。

つまり、自動車とソフトウェアの4つの時間は、2と3において一致しているのです。ですから、この2つの産業は兄弟のような関係にあると考えることはできないでしょうか。

残された1と4は。

1は基本的な生産システム技術の開発に要する時間ですが、残念ながら、ソフトウェア開発においてそのような概念を耳にすることはほとんどありません。もちろんIT(情報技術)が主役のソフトウェア分野ですから、さまざまな技術、テクノロジーは必要です。しかし、それらは自動車産業における、エンジン、トランスミッション、バッテリー、モーターといった要素技術にすぎません。

自動車産業に真の収益性をもたらしているのは、トヨタ生産方式のような生産システム技術であることを忘れてはなりません。

最後に4です。4は注文と注文の間隔です。これもある情報システムの注文主が特定の企業であると言う前提に立てば、3、つまり、ある注文が出荷(リリース)されるまでの時間にほぼ等しいものになります。なぜなら、ある注文の出荷を待つ間、次の注文に応えることは普通のソフトウェア開発において容易なことではないからです。この4において、自動車産業とソフトウェア開発は、1分対1週間(1日8時間週5日稼働として2400分)という圧倒的な違いを見せることになります。

この違いはそのままこの二つの産業の収益性の違いと言うことができます。ただこれには例外があります。それは同一のソフトウェアが大量に販売できる場合です。もちろんこれは顧客ごとの要件に応じて開発する企業向け情報システムの開発にはあてはまりません。しかし、マイクロソフトのWindowsのような量販品にはあてはまり、マイクロソフト社の巨額の利益を説明しています。

企業向け情報システムでもSAPのようなERP(エンタープライズリソース計画)システムは標準仕様においては量販型であるため、SAP社は巨額の利益を上げることができたわけです。

しかし、量販型ソフトウェアビジネスの成功は、自動車産業で言えば、ヘンリーフォードによる量販車の成功と同じことです。

高度成長の終焉や、市場ニーズの多様化を背景にトヨタ生産方式、言い換えれば多品種少量生産方式は大量生産にとってかわり、トヨタを世界一の自動車会社にしました。

ソフトウェアにおけるトヨタ生産方式とはなにか。

シナジー研究所は、自動車のようにソフトウェアをつくりたいと考えています。