生成AIを考えるブログ 第1回
多くの企業が生成AIを導入し、レポート作成や資料作成に活用しています。しかし現実には、こうした声を耳にします。
- レポートは出るが、意思決定は変わらない
- 毎回ゼロから考えている
- ノウハウが資産として蓄積されない
問題はAIの性能ではありません。問題は、構造的な情報が生成されていないことにあります。
従来のITと生成AIの本質的な違い
従来のITシステムは、「すでに存在する情報」を正確に表示する装置でした。顧客情報はデータベースと一致していなければならず、そこに創造は求められていません。存在しない情報を出力すれば、それは欠陥です。
一方、生成AIはまだ存在しない情報を要望に応じて生み出します。経営者がM&Aの可能性を問えば仮説を提示し、管理者が品質改善策を問えば対策案を提示する。これらの問いには、あらかじめ存在する正解はありません。生成AIは、存在しない情報を創造的に構成する装置です。
この創造性こそが、生成AIが歓迎された理由でした。

しかし、創造性だけでは業務は賢くならない
生成AIの出力は創造的です。しかし、その出力は毎回揺らぎます。同じ問いを与えても、観点や項目数が変わることは珍しくありません。これは偶然ではなく、生成AIが確率分布に基づいて出力を生成するという原理に由来します。揺らぎは創造性の源です。
しかし、業務において揺らぎは資産になりません。
業務が必要とするのは、比較可能であり、蓄積可能であり、再利用可能な情報です。つまり、一定の規則を満たした情報です。本稿ではこれを構造的な情報と呼びます。
箇条書きという構造の錯覚
例えば、AIに「営業改善の施策は何か」と問うとします。あるときは営業プロセスの標準化やKPI管理が提示され、あるときはマーケティング強化やインセンティブ制度の見直しが提示されるでしょう。どちらも妥当に見えます。しかし、観点は固定されていません。
| 箇条書き A | 箇条書き B (Aの5分後) |
|---|---|
| 1. ターゲット顧客の再定義 | 1. デジタルマーケティングの強化 |
| 2. 営業プロセスの標準化 | 2. インサイドセールス体制の構築 |
| 3. KPIの可視化 | 3. 提案資料の高度化 |
| 4. 営業トレーニングの強化 | 4. インセンティブ制度の見直し |
| 5. CRMの活用徹底 |
見えているのは箇条書きというその場限りの形式にすぎず、構造そのものではありません。
観点が毎回変わるなら、改善は思いつきの履歴になります。構造の履歴にはなりません。
第1象限を目指せ!
以下の図は、創造性と構造性の関係によって従来のITと生成AIを比較したものです。

図1と同じように、左側が従来のIT、右側が生成AIです。この図は、さらに、構造性が高い上半分の領域と、構造性が低い下半分に分かれ、全体で4象限を構成します。
企業が慣れ親しんできた基幹系業務システムやSaaSサービスは、第2象限であり、比較的新しいITであるチャットやオフィス系ツールは第3象限に分類できます。
さらに、この図では、現在の業務において主流であるチャット中心AI活用は右半分の一部を構成しているに過ぎず、第1象限という理想領域が探求されていないことが分かります。
「Open AIを抜いたのか」と言われて注目されているGoogleのGeminiは、企業に浸透したWorkspaceと結合したところに強さがあると言われています。
ビジネスモデルとしては確かにそれはOpen AIが簡単に真似ることのできない強みですが、可能性の空間全体から見れば、現在のサービスは下半分を構成しているだけと見ることができます。
なぜならGeminiはチャット中心、つまり第4象限であり、Workspaceは第3象限だからです。
理想領域は第1象限であり、それこそがこれから目指すべき領域です。
創造性と構造性の両立
企業が本当に必要としているのは、創造的でありながら構造的な出力です。創造的でなければ未知の問いに答えられない。しかし構造的でなければ蓄積できない。蓄積できなければ資産にならない。この二つはしばしば矛盾しますが、両立しなければ組織は賢くなりません。
生成AIを導入しても業務が賢くならないのは、AIが足りないからではありません。構造を設計していないからです。
次回予告
第2回では、「構造を生成するAI」とは何かを定義します。創造性を保持しながら構造を固定するとはどういうことか。その原理を明らかにします。



