IT、デジタル化、AI、ロボット
ここでは、人と仕事とテクノロジーのかかわり方について書きたいと思う。
いま、IT(情報技術)が隆盛を極め、デジタル化の必要性が叫ばれている。
AI(人工知能)やロボットはますます私たちの身近な存在になりつつある。
このような流れのいきつくところはどこになるのか。
あらゆる分野で、自動化や無人化が進む社会は人に繁栄をもたらすのだろうか。
自動化や無人化が繁栄をもたらすとしても、それが画一的で硬直的な世界ならば、人類に究極の繁栄をもたらすことはないように思う。
なぜなら、人間を取り巻く環境は常に変化し、人間自身も文化的に進化することで、異なる願望や欲望を持つようになるからである。
したがって、一度出来上がった繁栄のシステムは絶え間なく更新され続ける必要がある。
そのようなシステムの更新は、人間の手によるものとならざるを得ない。
そう考えると、これからの人類は、自動化、機械化によって、つらい仕事から解放されて余暇を楽しむ一方で、そのシステムを更新すること、つまり社会をより良くする仕事に従事し、その仕事自身を楽しむという、2つの楽しみを手にする可能性がある。
よりよい人と仕事の関係、ヒントは現場に
そのためには、人と仕事の関係がより建設的で健全なものになっていく必要があるが、そのヒントは現場にある。
有名なヘンリー・フォード1世が発明した自動車の大量生産システムは、非人間的な仕組みの代表のように言われる。
しかし、ヘンリー・フォード1世自身は多くの著作の中で、組織のあり方や仕事のやり方の改善によって社会の繁栄がもたらされると説いている。
以下では、彼の著作、「ヘンリー・フォードの軌跡、ヘンリー・フォード著、豊土栄訳、創英社/三省堂書店」の第8章 事業の成長、■繁栄は、言葉ではなく働くことによってのみ達成される■■■、より、3つのパラグラフを抜き出し、一部の単語を、IT化・デジタル化の生みの苦しみの最中にある現代に当てはまる単語で置き換えてみたいと思う。
そうすることで、動力と機械による産業革命の仕上げ中だった100年前を参考にして、現代人の日常に起きている変化を建設的に見据えるためのヒントが得られと思うからである。
原著の単語(太字表示)を直後の()内の単語で置き換えて読んでみていただきたい:
パラグラフ1
産業(デジタル化)時代の到来は、実際の富を急速に増加してはいるものの、その配分に関して新しい問題を提起している。つまり一方では富める者はますます富み、貧しいものはますます貧しくなるという問題である。動力(IT)や機械(AI)による生産は、人間の手(手や判断)による生産よりはるかに優れているが、動力(IT)や機械(AI)によって新しい世界が作られるべきだという考えを、生産者達が持ち合わせていない。彼らは未だに手工業(アナログ)時代の古い範囲の中で考えており、大衆の大半も、その古い範囲の中で物事を考えているのだ。
パラグラフ2
(前略)我々が悩み、政府が失敗し、議論が行われている間にも、働く人々は働き、動力(IT)と機械(AI)の本当の意味を見出すという大きな成果を挙げ、動力(IT)と機械(AI)によって世の中の人々が自由を手にし、単に受け身ではなく能動的な新しい倫理観をみつけるという大きな成果を得つつあるのも事実なのだ。
パラグラフ3
労働問題の多くは、労働について実際の知識のない人間が、その問題を管理することに原因がある。つまり実体を知らない責任者の間から問題が生じるのであり、新しい種類の管理者、単なる代表者ではない、仕事を熟知していて、どうすれば仕事ができるかについて答えられる人間によってのみ解決できるということだ。
パラグラフ3は、置き換えがいらない、つまり現代社会にそのまま適用できる。
このブログ(人と仕事とテクノロジー)では、現代社会で働くことに関連して展開されているテーマ(理論、概念、定説など)を、現場そしてデジタルという二つの視点で振り返りながら、最終的に、ビジョンに向けて組織を導く経営手法について見通し(パースペクティブ)を得たいと思う。
(依田)